うち天

子育てで日々挫折するおじさんのブログ

『主戦場』は恐ろしい映画だ。


主戦場は恐ろしい映画だ。観たほうがいい。

以下、そればっか書いてます(笑)

『主戦場』を観てきました

映画『主戦場』のチラシより

話題の映画『主戦場』を観てきました。

話題と言っても5月中旬時点では渋谷・シアター・イメージフォーラムなどのミニシアター数カ所でしか上映しておらず、知らないひと、未鑑賞のひとが大多数だと思います。

5月下旬から6月、7月にかけて全国の映画館(いずれもミニシアターのようです)で順次公開されていきますので、これから加速度的に盛り上がるかもしれません。

評判を目にして気になっているひと、行ったほうがいいです。

私は5月上旬、渋谷のシアター・イメージフォーラムで観てきました。平日の昼間(13:30~の回)にもかかわらず、9割くらいは席が埋まっていておどろきました。

評判のおかげなのか、単に東京はひとが多いのか。
ふだんミニシアター・単館系は観ないのでわかりません……。

曜日・時間帯のせいもあってか比較的年配者が多かったです。しかし20歳代(?)の男女グループなどもいて、全体としては幅広い客層だったように見受けられました。
アニメ映画や特撮映画ばかり観ているので、なんだか新鮮(笑)

『主戦場』は「慰安婦問題」論争を題材にしたドキュメンタリー映画

慰安婦たちは「性奴隷」だったのか?「強制連行」は本当にあったのか? なぜ元慰安婦たちの証言はブレるのか? そして、日本政府の謝罪と法的責任とは……?

次々と浮上する疑問を胸にデザキは、櫻井よしこ(ジャーナリスト)、ケント・ギルバート(弁護士/タレント)、渡辺美奈(「女たちの戦争と平和資料館」事務局長)、吉見義明(歴史学者)など、日・米・韓のこの論争の中心人物たちを訪ね回った。さらに、おびただしい量のニュース映像と記事の検証と分析を織り込み、イデオロギー的にも対立する主張の数々を小気味よく反証させ合いながら、精緻かつスタイリッシュに一本のドキュメンタリーに凝縮していく。そうして完成したのが、映画監督ミキ・デザキのこの驚くべきデビュー作、『主戦場』だ。

映画『主戦場』公式サイトより

注目してもらいたいのは

この映画は「慰安婦問題」ではなく「慰安婦問題」論争を扱っている映画である

ということです。

本映画の主戦場はこの問題についての論争なのです。

対立するそれぞれの立場の中心人物たちがどのような主張をしているのか。

  • 根拠は?
  • ロジックは?
  • 対立する意見への反証は?

インタビューを通じてそれを明らかにしていくのが本作です。

現時点のあなたの立場・考えはどちらでもいい

慰安婦問題自体はすでに政治的問題としての側面が大きくなっていることはみなさん知ってのとおりです。

それに対していろいろな立場や考えがあると思いますが、鑑賞前にどのような立場をとっていようが(いまいが)、観る意義のある映画だと思います。
ただし観たあとの評価はかなり分かれそうです。

先入観なしに観たほうがいい映画なので、内容についてくわしくは触れません。

言いたいことは

  • まずは観たほうがいい
  • この映画だけで慰安婦問題をわかった気になったり、判断するのもまた危険である

ということです。

杉田水脈、ケント・ギルバート、テキサス親父

杉田水脈氏(衆議院議員・自民党)や櫻井よしこ氏、ケント・ギルバート氏といった面々がインタビューされる側として出演しています。

この名前を見て「観たくない」と思うひともいれば、逆もまたしかりでしょう。

なかなか「濃い」面々なので当然です。

ただ前述のとおり、この映画は慰安婦問題についての論争を主題にしているのであり、ひとつの主張を喧伝するものではありません。

知名度のあまり高くないであろうかた(というより私が不勉強なだけですが)も含めていろいろな立場のひとを丁寧に取り上げてインタビューしており、この映画の深みにつながっています。

名前だけで毛嫌いするひとがいたら、それはもったいないと伝えたいです。

これがある立場の主張だけをことさらに取り上げているようなら、あまりおすすめできないですけどね。

おわりに

  • 対談やディベートをしているわけではなく、あくまで各人へのインタビューであること
  • 映画である以上、編集されたものであること

上記のような点について気をつけたうえで鑑賞すれば、慰安婦問題について日・韓・米でどのような論争がおこっているのか、現時点(2019年5月。製作は2018年)の状況についてとても勉強になり、考えさせられる映画です。

映画館を出たあと、すぐうしろを歩く若い男女のグループがポツポツと思いを伝えあっていたのが印象的でした。

政治色の強いテーマなのでメディアも取り上げづらく、『カメラを止めるな』のようなムーブメントにはつながらないと思いますが、静かな広がりを見せる、そんな映画になるかもしれません。

チラシなどでも「スリリング」という表現が使われていますが、ある種の謎解きや冒険譚のような見せ方・演出のおかげでその表現がぴったりです。

いやあ、ほんとうに恐ろしい映画です。