こんにちは、4歳の女の子、1歳の男の子をもつアラフォーのおじさんです。
山寺 香『誰もボクを見ていない』(ポプラ社)を読みました。
17歳の少年が祖父母を殺害して金を奪った事件。埼玉で実際に起こった事件です。
犯人である少年の生きてきた境遇は「想像を絶する」という表現が陳腐に思えるくらい過酷なものでした。
「カネのために殺した」
このセリフの本当の意味を知ることは、多くの人にとって苦痛だと思います。
読み進めるのが本当にツラい。
でもすべての大人に読んで欲しい本です。
すべては読んで、知ることから始まるはず。
丁寧に描かれる少年の生い立ち。
それは「絶望」以外の何物でもない
事件の発生は2014年3月26日。
埼玉県川口市で少年が祖父母を殺害し金品を奪って逃亡。
後に逮捕された少年は「カネのために殺した」と供述します。
カネのために祖父母を包丁で刺し殺す?
一体どんなモンスターなんだろう。
本書の前半では裁判記録などをもとに、この事件の犯人たる少年の生い立ちが描かれます。
おそらくほとんどの人にとって理解不能、描かれる事実を知ること自体がストレスだと思います。
それでもこれは実際にこの現代の、埼玉や横浜で起こったことなのです。
貧困・虐待、そして犯罪。
わたしたちはこれに向き合わなければならない
事件の背景に貧困や虐待が浮かび上がります。
本書の後半では、この事件のような貧困や虐待が要因のひとつとかんがえられる犯罪に対して、この社会の大人一人ひとりの責任を繰り返し問います。
「社会の責任」ではなく「大人一人ひとりの責任」です。
わたしたち大人は
- 彼の生い立ちを知り
- 彼に似た境遇のだれかを想像し
- 具体的一歩を踏み出さなければいけません
それが少年の願いなのです。
さいごに、少年の手記から一部を引用します。
(略)できる範囲で自信の理想の社会と似た行動をしていただければ、と思います。
平等な社会を望むなら普段から平等に物事や人を扱ってください。
差別のない社会を望むなら普段から差別をせず人を見つめてください。
貧困のない社会を望むなら普段からそのような人を見つけたら助けてあげてください。
そうすれば社会全体が理想に近づくのには時間がかかっても、自身の周囲だけは理想の社会になると思います。『誰もボクを見ていない』P.189より