うち天

子育てで日々挫折するおじさんのブログ

書評『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』この本は最強のおっさんホイホイ


こんにちは、4歳の女の子、1歳の男の子をもつアラフォーのおじさんです。

今日は各所で話題の『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』という科学エッセイの紹介です。

だれが読んでも笑えて、しかも勉強になる本ですがアラフォー以降のおっさんに特におすすめです。

この文章でクスッときたら速攻買いましょう

 突発性カール症候群を発症した。小笠原での調査出張中に強い発作に襲われ、しばらく安静にしても収まる気配がない。これはこまった。明治カールが食べたくてしょうがない。
(P.149より)

「カール症候群? 熱帯で罹る感染症かなにかかな……。」
と思ったわたしの心配をかえして欲しいです(笑)

2017/05/27 追記 カール販売停止!

東日本でのカール販売停止が決まりましたね。
著者さん、大丈夫でしょうか……。 (追記ここまで)

本書は全編にわたってこのようなシャレ、言葉遊び、ネタのオンパレードです。
アニメやサブカルネタも多く、特に40代以降のおっさんにしか通じなそうなネタも多数ぶっこまれています。

電車で読むとニヤニヤしちゃうから気をつけて!

鳥類の生態の本? いいえ、鳥類学者の生態の本です。

本書を書いたのは鳥類学者さん。
内容の多くは鳥に関することです。
鳥類の興味深い生態についてわかりやすく教えてくれます。

しかし鳥さんたちだけでなく、それを研究する鳥類学者の(奇妙な)生態についても詳しく知ることができるというおトクな一冊になっています。*1

一部を引用してみましょう。
4章2節の冒頭。

 お腹が空いたら森永チョコボールだ。むむっ、こんなところに鳥がいるではないか。ここは一つじっくりと観察し、その行動を推定しなくてはなるまい。
(P.113より)

これだけでいろいろとツッコミたくなりますが、この程度で驚いてはいけません。

なんとこの4章2節は最初から最後まで延々と、キョロちゃんの生態の推定が繰り広げられるのです。

著者曰く「エア鳥類学」。

キョロちゃんの見た目(形態)から、その生態についてさまざまな推定をするんですが、これがまた面白くてかつ説得力抜群。

読者は思うでしょう。
「なるほど、キョロちゃんは樹上を中心に生活をしている鳥なのか」

しかし著者は直後にまったく別の視点・別の論理でもって、樹上生活をあっけなくひっくり返します。

挙句の果てにこのセリフです。

だいたい、形態だけで生態がわかるなら野外調査なんて不要だ。わからないからこそ調査するのだ。まったく、鳥類学をなめてもらっちゃ 困る!
(P.119より)

若者への超現実的 処世術 指南書でもある

本書のタイトル『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』にもある通り著者は若かりし頃から鳥類に興味を持っていたわけではありません。

本人曰く「そもそもハトに種類があることも知らなかった。」

そんな著者がいかにして鳥類学者になり、国立研究開発法人に就職し、何冊もの本を書くにいたったか。

そこにはとても現実的な処世術が隠されていました。
夢を抱く若者も、夢なんて描けない若者もいちど読んでみると心が軽くなることでしょう。

もちろん、現実的とはいえ簡単にマネできるものではありません。
軽妙な文章とはうらはらに、過酷なフィールドワークが研究の基礎になっていることがよく伝わります。

そしてそのフィールドワークこそが鳥類学の最大の魅力なんだと思いました。

今では具体的な目標がある。それは、テーマにこだわらず長期的に明るく楽しく鳥類学に励むことだ。
(P.221より)

こんな生き方ができたら最高ですよね!

生物学者の本にハズレ無し!?

『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』を紹介してきました。

わたしの中でここ数年、生物学者さんの著作(学術書でなく一般書)がブームです。
彼らの本はとにかくおもしろくてハズレが無い。

生き物を相手にするということ自体がとてもおもしろいことですよね。
それを仕事にしている生物学者さんたちは、変人ばかりとても興味深い存在です。

まさに「奇人」。最高におもしろかった。

幼虫が絹糸を作るカイコガ。カイコガの触覚をセンサーとして利用して、フェロモンを追うロボットを作る。

タイトル通り「すごい」以外の感想が浮かばない。進化ってなんだろう。

かの有名なクマムシ博士による、地上最強生物「クマムシ」への情熱にあふれた本。

生物相手の研究はやっぱり大変。大量のヒキガエルと格闘する研究者の記録。

そして今日『バッタを倒しにアフリカへ』が届きました!!

超楽しみです♪

おわり

*1:鳥類学者と一般化してしまうと各所からクレームがくるかもしれないけれど